森岡先生の奥さんであり、寛行さんの学生時代からの友人でもある美穂さん。
寛行さんは、美穂さんが森岡先生とケンカしたときの良き相談相手だったそうだけど。
その美穂さんに?寛行さんが怒られた?
「えと……森岡先生じゃなくて、美穂さんに怒られたの???」
「そっ。森岡には同情されたというか……けど、そのわりにあいつ非道くてさ」
「ひどい?」
「悩める僕をおもしろがって、すぐさま美穂ちゃんに電話したの。
そうしたら、僕のとこに直接美穂ちゃんから電話がかかってきて――」
「怒られた、と」
「“結婚式なめんな!”ってさ」
「うっ……そ、それは……」
美穂さんにガツンとぴしゃんと怒られて、まるでかたなしの寛行さん。
それって、なんか……おもしろいかも!!
っていうか、美穂さんよくぞ言ってくれました!みたいな。
思わずグフフと笑う私に、寛行さんは何やら不服そうな釈然としないご様子で。
「美穂ちゃんもこれまた非道くて、僕に説教してたのは最初だけでさ、あとは……」
「?」
「昔話」
「昔話?」
「そっ。自分が新婦だったときの新郎森岡の愚行の数々、それに対する恨みつらみ」
「ありゃりゃ」
「やれ“せっかく二人で衣装合わせに行ったのに居眠りこかれた!”とか」
「ふむふむ」
「“新婚旅行の段取りを丸投げしておいてからに後から文句つけてきた!”とか」
「なるほど」
頑張る新婦様?戦う新婦様?花嫁さんの怒りや幾ばくか。
爆発する美穂さんに恐れおののく森岡先生が容易に想像できてしまったから――
余計に可笑しくて、私は“わかるわかる”と頷きながら一人で愉快に笑ってしまった。