到着した場所は、もちろん人里離れた山奥ではなく。


……ここ、前にも来たことあるとこだ。


テニスコートがあって、立派な枝垂れ桜がある大きな公園。

春に二人きりで夜桜見物をした公園だ。


寛行さんは車を止めてシートベルトを外すやいなや――


「あのさ――」

「え?」


私のほうへ向きなおって真顔で一言。


「ひょっとして、怒ってた???というか、実は怒っているんだよね???」

「……!」


……絶句。


っていうか、はぁあん!?って感じですよ!!

“ひょっとして”って何!?“実は”って!?


「僕、ちっとも気づかなくて。というか、そうとは思わなくて」

「あの、あのデスね……」


な、なんですとぉお!?“気づかなくて”!?


「そりゃあ、ちょっと元気ない?とは思ったけど“メンテナンス中”だからか、と」

「はぁ……」


“メンテナンス中”というのは“生理中ですよ”という意味で。

私はいつも机の上の卓上カレンダーに書き込むことで、無言で彼に知らせているのだ。


っていうか――

私ってば、生理だからブルーだと思われてた!?

もぉお!あり得ないくらい一人相撲だよ!


あまりの衝撃に、ご立腹をすっとばして、あんぐりぽかーん、ぱくぱくぱく……。

そんな私をよそに彼はさらさら~っと話しを続けた。


「けど、昨日チョコレートくれなかったじゃない?それで“あれ?”っと思ってさ」

「それは……」


そう、昨日はバレンタインデーだったのに、チョコを渡しそびれちゃって。

もちろん用意はしていたのだけど、なんとなく素直になれなくて、きっかけもなくて。


「で、森岡にその話をしたら、最近のことなんかもいろいろ聞かれてさ」

「……それで?」

「美穂ちゃんに怒られた」

「はい!?」


み、美穂さんに???