田山花袋の『蒲団』は、花袋自身とその弟子の交流を元ネタとした私小説である。

内容は――

あるとき、作家先生のところへ年若く熱心な女性が弟子入りを志願してくる。

弟子入りを許された女性は、作家先生宅に下宿することに……。

いろいろ理由をつけられて、先生の手元に置かれることになったわけである。

先生の奥さんは育児に大忙しで、先生に妻や女の顔を見せる余裕はありません。

そんなこともあり、先生は自分を師と慕う彼女にすっかりご執心。

が、しかし!そんな彼女に彼氏の存在が!

しかも先生よりも若い!情熱もある!

先生的にはおもしろいわけがなく。

色々あった挙句にカッコ悪い卑怯な手段を講じて彼女を郷里へ強制送還させてしまう。

けど、追い出してしまったものの……。

彼女が出て行ったときのまんまの部屋で、号泣しちゃうのであった。

しかも、彼女が使っていた蒲団の匂いを嗅ぎながら……。


とまあ、ざっくり言うとこんな感じ……だったと思う。


見どころはもちろん最後の“くんくん”だ。


「あ、詩織ちゃん!明日僕が出かけていった後で、君もしかして!?」

「な、何言ってんですか……!」


彼の居ない一人きりの夜のことは絶対に内緒だ。

一人淋しく、彼のパジャマを抱きしめて匂いを嗅ぎ倒して眠ったなんてこと……。