来客用のお布団は一組しかなくて……。
私たちはぎゅうぎゅうとくっついて、なんとかその布団に収まろうと試みた。
「寛行さん、完全にはみ出てるね……」
「布団はこれ一組だからなあ。なにせ客の来ない家なもので、すまないねえ」
「“友達少なくてごめんなさい”?」
「この子は……」
「なーんて。私、寛行さんにはいいお友達がちゃんといるって知ってるよ」
「はいはい」
「ほらほら、もっとくっついて下さい。凝集凝集」
「凝集って……高校の生物か化学で習ったような」
密着しようとするほど互いの腕がどうにも邪魔で……。
彼が枕をどけて伸ばしてきたその腕に、私はいい塩梅に収まってくんくんした。
「くんくん中?」
「ん。くんくん中。あ~、お布団でのくんくんもまた乙なもんでございますなぁ~」
「お布団、くんくん……ふむ、なるほど」
「ん?」
「いや、田山花袋を思い出してしまうのは僕だけだろうか?なんてさ」
「あぁ~!アレね!」