気がつけばもうすっかりお昼時。
賑わう問屋街を二人並んでぶらぶら歩く。
「あーあ、寛行さんのは私が買うって言ったのにぃぃ!むぅぅ!」
「まったく、君って子は……いきなりあんなこと言うんだもんなぁ」
「だってー……」
「“お会計は別々にしてください”なんてさ」
「別に変じゃないし、ぜんぜん」
「あのね、お友達同士でご飯食べに行ったわけじゃないんだから」
「えー」
「“えー”じゃない」
結婚指輪のお支払いについて、私は彼の指輪の分は自分が払う!と強く主張した。
まあ、結局は彼が全額支払ってしまったのだけど。
そんなわけで――
ちょーっとぶちぶち拗ねてる私……。
「だってね、だってね、お互いに贈り合わないと意味がないと思ったんだもん」
「ちゃんと贈り合ったじゃない」
「???」
「お互いに良い考えを“出し合って”素敵な指輪ができそうです」
「それは、まあ……」
「これも立派な“贈り合う”ということです。はい、わかりましたね?」
「はい、わかりました……って!なんで先生口調なんですか!もう!」
「それは、先生だからです」
「またそうやって開き直ってからにぃぃ」
そうして私は文句をたれつつ、彼の腕に甘えるように絡まった。