帰りしな――
「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」
「ハイ!どういったことでしょうか?」
私は加藤さんに聞いてみることにした。
なんとなーく気になっていた、ものすごーくどうでもいいアノことを。
「あのですね、こちらの社長さんのお名前ってイニシャルは“KH”なんですか?」
「いいえ。遠藤武雄ですのでイニシャルは……“TE”か“ET”でしょうか」
「そうですか……」
「大きな声では言えませんが、本人の風貌には“ET”のほうが合っているか、と」
社長は宇宙人顔の“ET”なのね……。
なーんだ、そっかぁ。
ほんっとどうでもいいことなのに、なんだかアテがはずれて妙にガッカリ。
けど、それじゃあお店の名前の由来ってなんだろう?
「じゃあ、このお店の“KH”って?」
「ハイ!“金持ち繁盛”でございます!」
「は?」
「KANEMOCHIの“K”と“HANJYOU”の“H”で“KH”です!」
「そう、だったんですね……」
なーんじゃそりゃ……。
センスない私が言うのもあれだけど、あり得ないほど……ねぇ?
しかも――
「社長としては、本当は“KHG”とつけたかったそうなのですが」
「“KHG”???」
って!?最後の“G”は?何?なんなの?
「ハイ!“金持ち繁盛ガッポリ”です」
「“GAPPORI”でしたか……」
「ハイ!ただ、社長の奥さんの反対でさすがに“バッサリ”だったそうですが」
「“BASSARI”でしたか……」
ばうーん……。
“ET”の見事なまでの“ずれっぷり”と“はずしっぷり”に苦笑するしかない私。
寛行さんは傍らで、そんな私を愉快そうにニコニコ眺めていたのだった。