高野家サイド?の細やかな配慮はお父さんを恐縮させ敬服させた。

「いやいや、ご挨拶を……きちんとお願いを申しあげたいのはこちらのほうですよ。

まだまだ世間知らずでちっとも頼りないこんな娘をもらっていただくのですから」

お父さん、“こんな”ってそんな……。

むぅぅ、そりゃまあ確かに?ぜんぜん世間知らずだし?まだまだ頼りないけどさ……。

なんだかちょーっと舞い上がって饒舌になっているお父さん。

そんなお父さんを、あらあらふふふと楽しそうにひっそり笑うお母さん。

二人の様子に寛行さんは、ほっと安堵の笑みを浮かべた。

「実を言うと、僕の両親はお二人にお目にかかるのをとても楽しみにしていまして。

“なんならこの冬休み中にでも”なんて言っているくらいなんです。

まったく“今月中”というのでも無理に急かしているようで申し訳ないのに……」

そう言って寛行さんがやれやれふぅと困ったように微笑むと――

「あらっ!いいんじゃない?二人が帰省してこっちにいる間に……ねっ?務さん?」

「ふむ。確かに善は急げと言うし。寛行君のご両親がそれでいいとおっしゃるなら」

お父さんもお母さんも、冬休み中に顔合わせすることにまさかまさかの大賛成で――

「ちょっ……お父さんもお母さんも!いくらなんでも急すぎだし!」

「あの、僕の家のほうが勝手にせっかちなことを言っているのはお気になさらずに」

「いや、わたしたちも寛行君のご両親に早くお目にかかりたいと思っていたんでね」

「ですが……しかし、あまりにも……」

「願ったり叶ったりよ~♪ウチは冬休みなんてどうせ食っちゃ寝してるだけだし~」

「そのとおり。こちらのことはまったく気遣い無用だよ、寛行君。

そういうわけだから、早速ご両親のご都合とも相談の上どうぞ話を進めてください」

「お、お父さんっ!」

「ウチはいつでもいいですからね~。きゃ~、着るものどーしようかしら~♪」

「もう、お母さんっっ!」

寛行さんも私も最早ノリノリな二人を止めることはできなかったのだった……。