私と桜庭さんのアホ話を寛行は勝手な下世話の想像とたしなめた。
けど、到着した並木先生の話を聞く分にはあながち勝手な想像でもなかったような?
だって――
「いやぁ、ちょうど正門のとこで真中君とばったり会ってねぇ。
聞けば、美術館のレストランに行くとこだって言うじゃない?
僕も昼はまだだったし、何より僕はここのパンがけっこう好きでねぇ。
だからね、彼にお願いしたの。
“ご馳走してあげるから僕も一緒に連れて行って”てね。
だけど、まさか高野君に遭遇するとは思わなかったよ。いやいやびっくり」
まさに“ご飯食べさせてあげるから一緒に……ね?”みたいな。
もちろん並木先生の目的は美味しいパンを食べることに違いないけど。でも――
それでも、先生の言い回しが妙におかしく聞こえてしまったから。
そして、そう思ったのは私一人ではなかったから。
私は寛行さんと桜庭さんと三人して思わずくすくす笑ってしまった。