バッグの中をゴソゴソ探して慌ててケータイを取り出すと――

「沈黙してるね、君のケータイ」

「えーと、これはですね……」

うぅ、私ったら図書館に入るときに律儀に電源を切ってそのままに……。

寛行さんがフフンと笑って勝ち誇った表情で私を見る。

「ケータイは携帯するだけでなく、ちゃんと電源を入れておいてくれなきゃねぇ」

「だって……あっ!きっとカモシカが知らないうちに来てこっそり電源切ったんだ」

「ほほう。なんでまた?」

「えっと……エコ?みたいな」

あぅー、なんつう無茶苦茶な言い訳を……。

「へぇー。省エネ省エネって家中のコンセントを抜いてまわる人みたいだねぇ」

「そ、そうなの!そういう感じ!」

「そっかぁ……って、そんなわけないでしょ。人のせいにしてはいけません」

「“人”じゃないし……」

「屁理屈言わない」

「むぅぅ……」

そりゃあカモシカのせいにしたのは悪かったけど。

でも、あんまり寛行さんが鬼の首取ったみたいな顔するから悔しくて、つい……。