大学病院に救急搬送だなんてそんなっ!!

私は思いもよらぬ一大事を聞き、とにかくもう頭が真っ白に。

「あのっ、あのっ……」

「大丈夫だよ、心配しなくても」

「だって、救急車を呼ぶなんて!」

「高熱による痙攣だったらしいよ。乳幼児には時々みられることで心配ないってさ」

そう言って彼はにっこり笑うと、私を安心させるようにさらに詳しく話を続けた。

「入院の必要もなかったし、今頃はもう自宅で休んでいるはずだよ」

「そっかぁ。よかった、本当に……」

「だいたいね、心配な状況だったら僕だって暢気に絵なんて見る気になれないよ」

「それもそっか」

「僕は森岡たちを家まで送る気でいたんだけど丁重にお断りされちゃってね。

美穂ちゃんのお母さんが迎えに来ることになっているから大丈夫って。

それにほら、考えてみると僕の車にはチャイルドシートがないからね。

そんなわけで、大学へ戻っても講義だって無いし、ぽっかり暇になっちゃって」

「だから美術館に?」

「そっ。せっかくこの界隈に来たからね」

「けど……だったらケータイに連絡くれたらよかったのに」

「したよ」

「へ?」

「“高野先生”は“鈴木さん”のケータイにメールも電話もしましたよ」

「うそーん」

っていうか“高野先生”って言われたこと、なんか妙に引っかかってるみたいだし……。

「君がずっと電源を切っていたか、電波の届かないところにいたんでしょ?」

「そんなはずは……あ゛ーっ!」