真中君にとって寛行さんはプロレタリア文学の師匠というか兄貴?というか。
だから、必ず締め切りを守る寛行さんに顔向けできない真中君の気持ちもわかる。
まぁもっとも、寛行さんが並木先生の方針に口出しするはずなんてないのだけれど。
だって、真中君の指導教授はあくまでも並木先生なわけで……。
寛行さんはそういう自分の立場をきちんとわきまえられる人だから。
「ボク、謝辞にはちゃんと高野サンの名前入れるからね。当たり前だけどさ」
「うん」
こんなにも後輩に慕われている自分の恋人が誇らしくって嬉しくなる。
「真中君、お昼ごちそうするよ。陣中見舞いに。ね?」
「おっ!ラッキー!っていうか……いや、ボクがおごるよ。おごらせてくれ」
「は?」
「シオリンに親切にしたらご利益ありそうじゃん?あやからせてよ!頼む!」
「いや、あの……私はお地蔵さんとかじゃないから」
私を拝む真中君にちょっと困って苦笑する。
するとそこへ――
「よかったらお昼ご馳走するよ?頑張ってる可愛い後輩二人にさ」
「あ、桜庭さん」
「うぉっ!兄サン!」
「真中クン、その呼び方はやめてくれ……」
頼りになる先輩がひょっこり姿を現した。