二月にはこのうちの住人になる私。

生活用品がおよそ揃っているこの部屋にはたいそうな嫁入り道具は必要ない。

連れてくるのは、フランソワと僅かな衣類と限られた本だけ。

「あのね、私、今度スタンプ台を買ってくるね。紺色のやつとピンクのやつ」

「それなら僕が生協で買ってくるよ」

「ありがとう!じゃあ、私が紺色で寛行さんはピンクね」

「僕、ピンクなんだ……」

「何か不満でも?」

「緑がいいなぁ、僕」

「もう、しょーがないなぁ」

「僕って“しょーがない”んだ……」

壁際に並ぶ背の高いスチール製の彼の本棚。

“詩織蔵書”の紺色スタンプを押された私の本たちも、いずれこの本棚の住人になる。

それを思うと嬉しくて、自分の誕生月がくるのが待ち遠しくてしかたがない。

「早く二月にならないかなぁ」

「あっという間だよ。年が明けたら忙しくなるからね」

「うん。お食事会の相談もしなきゃだし。結婚式の準備も少しずつやらないと」