これはもう完全な寛行さんの作戦勝ち。

だって、並木先生を召還?するなんて大技を使ってくるんだもん。

もちろん、結婚式のことに関してもう既に迷いはなかったのだけれど。

それでも――

やはり心の何処かに僅かながら小さな懸念は残っていて……。

けど、並木先生がそんな気がかりを払拭し、背中を押してくれたのである。

「先生、私も先生と奥様に倣って母校で結婚式を挙げちゃおうと思います」

「そうなさい。ドカーンとね」

「はい!もうババーンと」

私が元気よく答えると、並木先生は何処か安堵した表情で嬉しそうに笑った。

そして――

「ところで鈴木さん……」

並木先生が改めてちょっと真面目な口調で私に問う。

「研究室の人間で知っている人はいるの?誰かに話した?」

「真中君と桜庭さんだけには話しました」

「そう。あの二人が味方なら心配ないね」

「はい。いつもいつも助けてもらってばっかりで……」

すっかり仲良し三人組が定着している真中君と桜庭さんと私。

寛行さんと私の交際については、真中君だけでなく桜庭さんにも既に話していたから。

「まあ影でこそこそ言う連中も出てくると思うけど、あまり気にしなさんな。

こう言っちゃあれだけど、学位取って出て行くまでの辛抱よ。

耳掃除さぼって耳垢でも溜めて、しっかり塞いで聞こえないようにしときなさいな」

「もう、先生……そういう冗談言うから女子学生に避けられちゃうんですよ」