並木先生って普段は飄々とした感じだけど、実はほんっとおちゃめな人なのだ。
「並木先生……」
「まあまあ鈴木さん、そんな恨めしそうな顔しないで」
「だって、先生ったら人が悪いですよ」
「僕だって今までまんまと騙されていたんだから。その仕返しだよ?なーんてね」
もちろん騙したつもりはないけれど。
“高野先生”との交際について黙っていたのは事実なわけで。
「うぅ、それを言われると……」
「ほーらね。あいこだよ」
並木先生はさらに嬉しそうに微笑むと意気揚々と話しを続けた。
「僕んとこに今朝、高野君から“お願いがあるんだけど”って電話があったのよ。
急に何かと思ったら、あらびっくり!
鈴木さんと結婚するっていうじゃない?
でね、その報告と挨拶を改めてさせて欲しいと言うわけよ。
しかも“彼女の論文もけりがつきそうだし、出来れば今夜にでも”って。
いきなりそんなせっかちなコト言うから僕もびっくりしちゃったんだけどね。
けど“出来れば”も何も、僕が断るわけが無いじゃない?ほかの何をおいても」
先生のご機嫌な笑顔と温かい言葉がとてもとても胸にしみた。
並木先生、私たちのこと……。
認めていただけたことが嬉しくて、心からの祝福がありがたくて。