とりあえず注文を済ませて落ち着いたところで、並木先生が事の顛末を話してくれた。
「ひょっとして鈴木さん怒ってる?でもね、高野君は悪くないからね」
何故に“高野君”は悪くないのか?さっぱり理由(わけ)がわからない。
だって、私を驚かせようと騙くらかそうと算段したのは“高野君”では?
逆に並木先生こそ、ちょいと片棒を担がされただけなのでは?
「あのね、君を驚かせようと企んだのは高野君じゃなくて僕なのよ」
「はい???」
やっぱり事情がよくわからず、二人の先生を交互に見遣る。
すると何故か“高野君”まで、きょとんとした表情で並木先生を見ているし……。
「確かに高野君は鈴木さんには内緒にしてて欲しいと言ったけど、それは――」
そうして並木先生は、先生のイタズラ心に端を発する裏事情をけろっと白状した。
「あくまでも“論文指導が終わるまでは”ってことだったんだよ、高野君としてはね。
予め言っちゃって指導の間に鈴木さんの気が散るといけないからって。
だからね、本当は論文の話が終わった時点でネタばらししてもよかったの。
けど、僕が鈴木さんを驚かせてやろうと思って、わざと黙って内緒にしてたわけ。
いやいや年甲斐も無く、ついほんのイタズラ心でね。
しかし、どう?びっくりしたでしょ?作戦成功!なんてね。あはははは」