寛行さんはいつもの穏やかな口調で改めて話し始めた。

それこそ、まるでいたいけな子どもに優しくゆっくり諭すように。

「こう言ってはなんだけど、僕は結婚式なんてしてもしなくてもいいんだよ」

「え゛っ」

な、なんですとぉ!?

「ずるい言い方を承知で言うけど、僕だけでなく男なんて大概そんなもんだよ」

寛行さんが、手つかずのままのココアをドリンクホルダからひょいと取る。

「あのさ、衣装や式場を特集した男性向けの結婚情報誌なんてないでしょ?」

「うん、確かに」

「女の人みたいに結婚式に夢とか理想とか持ってる男は少ないだろうからね。

そもそも、あまり興味が持てないというか関心が向かないというか」

そう言って、彼はフタを開けたココアのボトルを私に差し出した。

「ハイ、どうぞ」

「ん、ありがと……っていうか、男の人はみんな結婚式なんてどうでもいいの?」

「もちろん一概には言い切れないけど、そういう傾向にあるのは確かだと思うよ。

少なくとも僕の兄弟は二人ともそうだったよ。友和も、正義も」

「ふーん」

「なにしろ、あの愛妻家の森岡でさえ結婚式の準備には辟易してたからね」

「えーっ!」