エンジンを切った車内はひどく静かで、その静けさが余計に気持ちを窮屈にする。
「ごめん、寒いよね」
「うん」
本当はそれほど寒くなかったけど。
沈黙が重くてちょっとだけウソをついた。
エンジンをかける音、温まり始める空気。
彼はゆったり紅茶を一口飲んで、それから静かに話し始めた。
「君に後悔して欲しくないんだよ」
「違うもん!私はちゃんと納得して……」
「君だけのことじゃない」
「えっ」
「後悔させないで欲しいんだよ、僕に」
必ずしもきつい言い方ではないけれど、強い意志を感じさせる彼の口調に思わず怯む。
「あの、あの……私……」
「ごめん、ちょっと怖い言い方した。決して怒っているわけじゃないんだよ」
彼の大きな手のひらが私の頭にふわりと触れる。
「ごめんね、僕が悪い」
「うんん、そんなことない……」
そう、寛行さんは悪くない。
私がてんで子どもだから……それだけだ。