まったくもう、いきなりそんな話振るんだもん!脱力するやら、呆れるやら。

けれども彼はニコニコ笑って楽しそう。

「まあ、君のおかげで疑惑も一掃されるでしょう。もう、すっきりさっぱりだ」

「結婚さまさま?」

「うん。あの礼拝堂でOGと式なんて挙げたら学内で一躍“時の人”だからね」

「えっ……」

寛行さん……。

彼はまっすぐ前を向いたまま、いつもの穏やかな口調でさらりと言った。

「君はせっかくOGなんだからさ。その特権を素直に使えばいいと思う」

「あ、あのね、寛行さん。そのことなんだけど、私はぜんぜん……」

「だって、君のお気に入りの場所でしょ」

「それは……」

私はつくづく思慮の浅い愚か者だ。

寛行さんが私の心の動きに気づかぬわけがないのに……。

「僕のことを気にしてくれてるの?」

「だって……」

「一生に一度の結婚式じゃない?見せつけてやればいいんだよ、堂々と」

「でも……」

「君が気にすることはない。言わせておけてばいいんだよ、言いたい人たちには」

「けど……」