帰りの車の中、私はできるだけさり気なく話を切り出そうと様子をみていた。
大学の礼拝堂での挙式はスルーの方向で。
ところが――
「あー、これで僕にまつわる疑惑の数々もいっぺんに払拭されるわけだ」
「はい?」
疑惑って?払拭って??何のこと???
なんだかいきなり、おかしな話を振られてしまったようである。
困惑気味の私をよそに、鼻歌まじりに上機嫌でハンドルを握る寛行さん。
「マザコン疑惑も不治の病疑惑も、一気に解消だよ」
「はぁ!?」
大きく身を乗り出そうとするものの、シートベルトにしっかりガガッと阻まれる。
マザコン?不治の病??寛行さんが???
「森岡との“おホモ達”疑惑も、ついでに奴の結婚がカムフラージュって疑惑もね」
なるほど……。
大学では生活感をまったく見せない私の彼。
30代の独身男性教員に浮上するありがちな三大?疑惑。
マザコン、病気持ち、ホモ……ですか。