礼拝が始まっても、私の頭の中は結婚式のことでいっぱいだった。
考えれば考えるほど夢は大きく膨らんで、憧れはさらにさらに募っていく。
だけど――
やっぱり、この礼拝堂で挙式するのは寛行さんには酷な気がしてならなかった。
だって、濃ゆーい師弟関係では無いにせよ私は学生だったわけで……。
教員の私生活、特に恋愛関係の話題はあっという間に広がるのが女子校のつね。
しかも、尾ひれがヒラヒラつきまくりで。
なのに、大学の礼拝堂で式なんて挙げたら、それこそもう……!!
それに――
学生だけでなく他の教員の人たちにもどんなことを言われるやら……。
むしろ、学生たちの噂話よりそちらのほうが気が気でない。
“くーだらないあてこすり”を言われ、彼が職場で嫌な思いをするのでは、と。
まさに教え子だった女性と結婚した田丸先生のように。
うーむ……。
牧師先生のありがたーいお話を右から左へ流しつつ、あれこれ一人で考える。
水原先生にはとても申し訳ないけれど、やっぱり……。
残念だけど、この礼拝堂での結婚式は諦めよう。
今夜からでもネットを使ってY市の結婚式場の情報収集を始めよう。
“二人でいろんな式場を見に行こうね”って、あらためて彼に言おう。
私はひっそりそう決めて、憧れをそっと心の奥にしまった。