水原先生は、ほんの一瞬わずかに目を見開いて驚かれた。
けれども――
「それはおめでとうございます!そうですか、お二人が……いや本当におめでとう」
すぐに満面の笑みを浮かべて私たちの婚約を祝福してくださった。
「神様のお導きですね。とってもお似合いですよ」
「水原先生にそう言っていただけるなんて、僕らにとって何よりの光栄です」
「ぼくにとっても大事な同僚と教え子が一緒に幸せになるなんて嬉しい限りですよ」
そう、水原先生にとっては同じ職場の大学教員と教え子の結婚。
私は必要であれば私の口から先生にきちんと説明させていただくつもりでいた。
“高野先生”は教員として何らやましいことはないことを。
だけど、先生は婚約に至るまでのいきさつを何も聞こうとなさらなかった。
それどころか――
「そうだ!どうでしょう?こちらの礼拝堂で挙式されたらいかがです?」
「「ええーっ!?」」
水原先生はニコニコ顔でもうノリノリ。
「本学の礼拝堂は本当に素敵ですから。とてもよい結婚式になると思いますよ」
憧れのF女学院の礼拝堂での結婚式。
水原先生の思いがけない提案で、二人の婚礼準備は本格的に始動し始めたのだった。