車は家路をひた走る。

ちょっぴり後ろ髪引かれる思いの私を乗せて……。

「詩織ちゃん、今日は一日お疲れさま」

「寛行さんこそ」

「それと……」

「?」

「ありがとう」

「こちらこそ……ありがとう」

一日の緊張を互いに労う私たち。

帰りの車中、それ以上あとはあまり話さなかった。

黙って安全運転に集中する彼の隣りで、私はただ安らかな夜の闇を眺め続けた。

ごくごく弱いボリュームで遠慮がちに流れるラジオ。

二人を包む澄んだ静寂、温かな沈黙。

疲れきった私はすっかり安心しきって……。

いつの間にやら……。

彼のいつも運転で、心地よい眠りの国へと運ばれていた。