今一度あらためて居住まいを正した寛行さんが、お父さんを真っ直ぐに見る。

「先達てお手紙で申し上げたとおり――」

もし、ここがフローリングにソファーじゃなくて、畳に座布団だったら――

「今日は詩織さんとの結婚のお許しをいただきたく、お願いに上がりました」

寛行さんは座布団から降りて、正座して、手を突いて、頭を下げたに違いない。

お父さんが寛行さんの覚悟を無にするはずはない。

そうと知りつつ、私はかしこまって緊張しながら彼とお父さんのやりとりを見守った。

「僕の両親は、詩織さんと僕とのことをとても喜んでくれています。

両親だけでなく兄弟や甥や姪も。

詩織さんが家族になってくれるのを楽しみにしてくれています。

ありがたいことに、詩織さんも僕の家族を気に入ってくれたようで。

仲良くやっていけそうだと言ってくれています。

“幸い”という言い方もなんですが、僕は男ばかりの兄弟で小姑もいませんし。

義理の姉や妹もさっぱりしていて面倒見のいい気のいい人たちです。

僕の家のことで詩織さんに心細い思いや淋しい思いは決してさせないつもりです。

ですから――

僕らの結婚をお許しいただけたら、と。

どうか、お願いします」