食事の後は片付けはそこそこにして、皆で紅白饅頭をいただきながらお茶にした。
さーて。
いいかげんそろそろ誰かが、どうにかしなけりゃいけませんよ、と……。
弾丸ツアーの寛行さんと私は今夜Y市に帰るのだもの。
故に、タイムリミットなるものがある。
果たして、寛行さんは話をどう切り出すのか?
それとも、ここは私が何かきっかけを作るべきなのか??
いやいや、やはり寛行さんの見せ場?だもの。だから私は静観すべきか???
一人密かに思案しながら、湯飲みのお茶をずずずと啜る。
そんなとき、お父さんが寛行さんのほうに向き直り穏やかな口調で言った。
「それじゃあ、寛行君の用件とやらを聞かせてもらおうかな」
お父さん……!
なんと……これが戦なら敵に塩をおくるくらいの度量の大きさ。
前にも思ったことだけど、お父さんって寛行さんの前だといつもと一味違うのだ。
妻や娘に甘いあのお父さんは世を忍ぶ仮の姿か?なんて思ってしまうほど。
寛行さんが話しやすいように助け舟を出してくれたお父さん。
お父さんの心遣いは、頑固親父の意地よりもずっとずっとカッコいいと思った。