お夕飯は、お母さんが鍋の用意をしてくれていた。

ちょうど寒くなってきて温かいものが食べたくなる今の季節にはぴったり!

というだけでなく――

「お昼をご馳走になってくるって言ってたけど、まさか鍋はないと思ってねー」

さすがお母さん!

お昼の内容とかぶらないようにという機転をきかせた配慮とは。

食事をしながら、私は高野家での出来事を機関銃のように喋りまくった。

皆さんが親しみをこめて私を“しーちゃん”と呼んでくれたこと。

弟夫婦のマサさんとむっちゃんの出会いはむっちゃんの教育実習先の学校だったこと。

お義母さんの趣味は麻雀で、おかげで皆が麻雀を打てるように勉強させられたこと。

そして――

「まあ!可愛らしくて素敵な指輪だこと」

「うん。あのね、サイズもぴったりなの」

お義父さんとお義母さんの大事な指輪を私がこうして受け継いだことも。

「そんな大切な物を譲っていただくなんて、しーちゃんは幸せな“お嫁さん”ね」

「えっ……」

“お嫁さん”と言われて、思わず一瞬言葉につまる。

だって――

お父さんと寛行さんの表情がさっと変わるのを感じたから……。