いや、違う。


いつのまにか私は、彼と目を合わせたい、話がしたい、自分のこと知ってほしい、名前を呼んで欲しい。


そんな風に欲張りになっていたんだ。


あれだけ毎日通りすがってるなら、私のこと少しは覚えてくれてるかななんて、自意識過剰な期待を抱いたりした。



ホースの水がしぶきを上げる。


空が青い。

澄んだ水色の空だ。


人の気配がしてぱっと顔を上げて見たら、近所のおばさんが犬を連れて歩いてきただけだった。


豹柄の首輪のポメラニアンが私を見る。



笑ったわね?

今、笑ったね、君。