派遣とは、現場の職員の命令を受けて働く立場の人間。

請負とは、決められた仕事のみをこなす人間で、現場の指示には従わない。


つまり、請負の立場にある彼女は、ベッドの操作が請負の仕事に入っていないため、

それをやれば、契約違反ということになるのだ。


山下さんは、わかったような、わからないような、複雑な顔で、

だけど、おとなしくなって、ポツリとこぼした。


あんたたちも、大変なんだね、と。


看護補助の女性は、苦笑いしながら立ち去った。


冷静に考えれば、病院の仕事で、請負なんてものが存在しえるはずがない。

看護師は医者の指示で、看護補助は、看護師の指示でしか、動けないはずなのだから。


もしも、それを勝手にやれると言うのなら、もはや医師にも看護師にも存在意義はない。


しかし、それを仕事をきれいに割り振っているという、名目で、

まるでそれが本当に、ただの請負であるかのように見せる。


手品のように。


まったく、お偉いさんの考えることは、

世間一般の常識からは、宇宙よりも遠いところに存在しているとしか、思えない。


入院している患者さんから見れば、誰が職員で誰が請負かなんて、

関係ない話だ。