結局、神奈川の名前を出すと、指導医の大谷は、すぐに飛んできた。
外来を開けると、彼女は、患者専用の営業スマイルで、にこやかに笑う。
「おはようございます。
すみませんね、遅くなって」
「いえいえ、いいんですよ。
先生も、お忙しくて大変ですなぁ」
さっきまで、受付で、
お前ら皆、馬鹿だの、給料泥棒だの、なんだのとわめいていたオヤジ。
突然、好々爺に変身。
下手な三文芝居に、笑う気もおきない。
あんたらがそうやって、医者に文句をつけないから、
こいつらは、いつまでたっても変わらないんだよ!
思わず舌打ちしそうになるのを懸命に堪えて、
大谷から、カルテを受け取った。
うちの病院、いまだに電子カルテが導入されてない。
ま、職員を見れば、その理由は一目瞭然だけどね。