・・やっぱり、だめ、か。



無言のまま、いたずらに流れる時。

私は耐え切れくなって、彼の腕にのせた自分の手からそっと力を抜いた。

この歳で受けた傷は、そう簡単には治らないだろうけど、



・・しかたないね。



この想いが一方通行のものであるなら、それを押し付けたところで結果は同じだ。

カルテ庫の空気が、私の自由を奪うように重く纏わりつく。

重力にしたがって落ちた私の腕が、だらりと、まるで朽ちた枝のように体に戻ってきた。


次の瞬間。


私の手首がいきなり亮雅の腕に掴まれたかと思うと、

悲鳴を上げる間もなく、体がすっぽりとおさまっていた。


亮雅の、腕の中に。