「私、亮雅が好きなの」


自分がその言葉をすらすらと口にできた事には驚いたけど、その言葉自体には何の驚きもなかった。

そう。私は亮雅を好きなのだから。もうずっと。


「何を馬鹿な事を。俺たちは遊びだ。最初からな。お前をからかって遊んだだけだ」


彼はドアノブに手をかけたまま、広い背中を私に向けている。


「私を見て、亮雅」


私はゆっくりと彼の背に近づくと、亮雅の右腕に手をかけた。

白衣はひんやりと冷たくて、何の温度も感じられない。


「嫌われてるなら、それでもいい。でも私の目を見て、ちゃんと答えて。


私は、亮雅が好きなの。

もうとっくに、体だけの関係だなんて思えなくなってた。


亮雅は?

私が嫌い?


本当に、最初から最後まで遊びだった?

ただの一瞬でも、本気になったことはなかった?」


すがりつく女になんて、自分は絶対にならないって思ってた。

けどそれは、私が本気の恋をしたことがなかったから。

あきらめきれない人に、出会ったことがなかったから。