「つっ!」


亮雅の与える痛みに声を上げる私を無視して、彼は恐ろしいほどの怒りをあらわにした。


「言うんだ。連中に何をされた!」


「な、何って」


「また連れて行こうとしたのか!」


「また?」


私の言葉に、亮雅の顔色が変わる。一瞬で紅潮していた肌が、今度は色を失った。


「いや、前に街中で、連中に絡まれたことがあっただろう」


「つまり、仲地先生は私の言う二人組みが、あの時の二人組みと同一人物であるとご存知なんですね」


今度こそ、亮雅は声をなくして目を見開いた。そこに映る私の瞳と目があう。

厳しい顔をしている、目のつりあがった私。


ちっ、と小さく舌打ちをして、亮雅は転がったスツールを立て直す。


「夏夜」


つぶやくように、亮雅の唇から零れ落ちた音を敏感に拾い上げ、

私は胸いっぱいにその声音を感じ取った。