地下二階。

相変わらず最低限の明かりしかついていないそこは、エレベーターから降りるのをためらわせるほどの暗さだ。

環境のためとうたってはいるが、おそらくは電気代の節約のためだろう。

病院の経営というのは、案外苦しいものなのかもしれない。


亮雅のすぐ後ろを歩いてカルテ庫へ入ると、懐かしい匂いがして気分が凹んだ。

一緒に暮らし始めてからここへ来ることはなくなったけれど、それだってそんなに昔の話ではないのに。


「久しぶりだな、ここへ来るのは」


亮雅も同じ事を思ったのだろう。部屋の中をぐるりと見渡してから振り向いた。


「それで、話っていうのはなんだ」


一つだけあるスツールに、当たり前のように腰をおろす亮雅。

教師に叱られる子どものように、私は亮雅の前に立ちすくんだ。


「遠まわしなのは嫌いなので、単刀直入に言います。

私を病院から解雇させたのは、仲地先生ですね」


「だったらどうした?」


全く確証がなく、引っ掛けのつもりで投げた私の言葉を否定しないことではなく、

“仲地先生”という呼び方に異論を挟まない。

そのことが、私の胸に重石のようにずっしりとのしかかった。