病棟へ向かうエレベーターホールには、ほとんど人がいなかった。

お見舞いは午後からで、午前中は回診の時間だからだろう。

私は一人悠々と広いエレベーターに乗り込んで、ほっと息を吐いた。


あの二人組みが私を襲ったのは、偶然じゃなかった。

そしてその後ろには永井がいた。


それはおそらくこの先もゆるぐものではないだろう。

だが、その後ろにいるのは?永井の背後で糸を引いているのは誰なのだろう。

彼が一人でこんな事をするわけがない。動機がないからだ。

私の過去をよく知り、私に昔の事を穿り返されては困る人間がいるはずなのだ。


上昇する感覚もなく、エレベーターは私の目指す階にたどり着くと、チン、とベルを鳴らした。



・・本当に、亮雅なのかしら。



ここまで来ても亮雅を庇う自分がいて、情けなさで倒れてしまいそうだ。


裁判記録の載った新聞や雑誌を持ち、二人組みに襲われたとき都合よく現れ、

病院に近づくなと、私の行動を制限する。


そして、彼がそんな事をする動機も、今の私には思い当たるふしがあった。


ドックン、ドックンと、心臓が収縮する。

そのたびに血液が送り出されている音までもが、耳に響いた気がした。