「なっ! 一体何のことだい?」


「私のワインの中に何を入れたの?睡眠導入剤?

どうせうちの病院で処方してもらったんでしょ?永井君のカルテ、調べてみようかしら」


その気になれば、カルテなんてなくても彼が処方されている薬なんてすぐに調べられる。

里佳子に頼めば、オンラインですぐに見えるからだ。

もっともそれは一種の犯罪になるので、本当に頼むつもりはないけど、

永井を混乱させるのには有効な一言だった。


「ふざけるなっ!

僕が薬を処方されてるからって、それが君が飲んだものと同じだってどうやって証明できる!」


私は無言で永井を見つめた。

それの意味することに気づいた永井は、はっとして自分の掌を口元へもっていったが、

時すでに遅し、だ。彼の言葉に含まれている真実の欠片を私はすでに手にした。


「私を脅迫しようとしたの?あなたにそれを指示したのは・・・仲地先生?」


少しの変化も見逃さないように、息を詰めて彼の表情を見つめた。

けれど私の言葉に、彼は一瞬目玉をぎょろりと動かしたかと思うと、冷静さを取り戻し、引きつった顔で笑った。


「ふん。君こそ病院を脅して金を巻き上げるつもりだったんだろう。

ありもしないカルテをせっせと探して。最低の女め」