二人は顔を見合わせて、お互いに目で合図をしている。
里佳子は仁王立ちで彼らの行く手をふさぎ、私は震える足に力を込めて彼らをにらみつけた。
「なんだよ!」
「なんだよじゃないでしょ。あんたら二度もこの子を襲ったんでしょ!
この病院には警察もいるんだからね。今すぐ捕まえてもらうわよ」
警察がいるっていうのは、里佳子の張ったりだ。
本当は、元警察官で、今は警備の仕事をしている人がいるってだけで。
警察を定年退職してるから結構な年なんだけど、それでもやはり他のアルバイト警備員とは少々迫力が違い、
刃物を持ったやっかいな患者さんが来たりすると、様子を見に来てくれるので私たちとは顔見知りだ。
そんな張ったり通じないだろう、と思った私と反対に、彼らは意外にも警察の言葉にうろたえ始めた。
「ちょ、ちょっと待てよ!俺たちは頼まれただけで、何もやってないって!」
「頼まれたって、誰によ!」
里佳子の詰問に、彼女に近い側にいた男が焦ったように叫んだ。
「名前は知らねぇよ!銀縁の眼鏡をかけた色男だよ。
その女の裸の写真撮って渡せば、金をくれるって言うから軽い気持ちでやっただけだよ!」