「ほら、行こう!」
里佳子に背中を押された直後、私は派手な格好をした二人組みの男を視界の端に捕らえた。
「あっ!」
「どうしたの?」
何も答えない私の視線をおった里佳子も、目立つ二人が目に入ったのだろう。
ひょっとして、夏夜を襲ってきたやつ?という問いに、私はこくりと頷いた。
「捕まえよう」
「え?」
「捕まえて、話を訊かなきゃ!」
「待って、危ないよ!」
「大丈夫だよ。いざとなったら病院に駆け込んで、コード・イエローをかければいいよ」
行動的な里佳子は、言い終わらないうちに早足で男たちへと向かっていく。
彼らは、病院の玄関でタバコを口にくわえたまま、中に入るでもなくうろうろしている。
「ちょっと、あんたたち!」
里佳子の剣幕に、なんだ?というようにいぶかしげに眉を上げた二人だったが、後ろにいる私に気づいたようで、顔色が変わった。
タバコの灰が、地面に飛び散って落ちた。