「おろして!」


ラブホテルのいいところは、人目がないという点にある。

私が声を上げても、誰かが文句をつけたりもしない。


「いいから黙ってろ」


ひどく迫力のある声が、鼓膜を揺らして、どうすることもできなくなる。

結局、私の抵抗はむなしい失敗に終わった。

部屋に連れられると、そのまま浴槽に突っ込まれた。


「脱げ!」


「え?」


「いいからさっさと脱げ」


「い、嫌」


ちっという亮雅の舌打ちが、バスルームに響く。

不機嫌だということは間違いないけれど、何を考えているのか全くわからない。


私から服を剥ぎ取ることはせず、亮雅は突然シャワーのコックをひねった。


「きゃっ!」


とたんに熱い湯が、私の頭から降ってくる。それは針で刺される様に鋭く痛んだ。

ジャグジーのスイッチも入れたのだろう。

同時に、ものすごい勢いで浴槽にお湯が溜まり始めた。