次の日は、雨が降っていた。

朝まで眠れなかった私は、窓に当たる雨粒を鑑賞して夜を明かした。

予想通り亮雅は帰って来ず、私は勝手に覗いてしまったクローゼットを元通りにしまった。

そのままにして詰問することも考えたが、私の中に、ある一つの仮説が出来上がったのでそれは避けた。


仮説、それは、亮雅が病院の回し者なのではないかということ。

亮雅は、私がカルテを探しているのを知って、すでに病院に密告したのではないか。


それが、一晩考えた挙句、私が下した結論だった。


亮雅の密告を元に、病院は私の身元を確認し、実は裁判の原告の家族だったことが判明する。

両親は離婚しているので姓は違うが、調べればそれくらいのことはすぐにわかりそうだ。

その上で、亮雅に私を監視させる。

首にしたりしたら、逆に騒いでマスコミに駆け込むかもしれない。

それなら、近くで飼い殺しにしていたほうが、病院にとってはメリットがある。

ファイルは病院側が資料として保管していて、それを亮雅に貸し出したと考えればつじつまがあう。


そんな風に考えた。

ひょっとしたら、不動産屋にしたって病院が手を回したのかもしれない。


そう思うとぞっとした。

病院の中の誰もが、私を見張っているように思えた。