私の二十数年の人生の中で、灯りのついている家に帰る年月よりも、

そうでない年月の方が圧倒的に長い。

それなのに、玄関に入り真っ暗な部屋を見て、妙な虚脱感を覚えるのは、

多分私が期待していたから。



・・亮雅、一体なんで機嫌が悪かったんだろう。



飲み会を抜け出して一緒に帰れる、ううん、たとえ抜け出さなくても、

お開きになった後、一緒に帰ってこれるはずだった。

同じ家に住んでいるのだから。


『仲地!お前、酒は飲んでなかったな。一緒に来い』


9月から、亮雅は脳外科を回るようになっていた。

多分、電話のかかってきた脳外科の先生は、今日オンコールの日だったんだろう。

だから、アルコールは避けていた。

でもまさか、亮雅まで連れて行くなんて、思ってもみなかった。


おそらく今日は、朝まで帰ってこない。

少しだけ、いや、かなりがっかりしている自分がいることに気づかされる。


なぜか、なんて、突き詰めれば都合の悪い答えが出てくるから、

もちろん、考えないようにするのが一番だ。