さらに言えば、そもそもこの飲み会の趣旨は、

泌尿器科のおやじ医師と、私がいる内科に新しく入った受付の子が一緒に飲む、ってところにある。


まったく関係のない私だが、医者に声をかけられた新人さんに、一人では行きづらいから一緒にいてほしい、

と頼まれて、いやいや連れ出されたわけなのだ。


それなのに、肝心の新人さんは、別の若い医師と一緒に盛り上がっていて、

おやじは、私の担当みたいになってる。



・・まったく、な~にが、『私、人見知りするんで、先輩一緒にお願いします』だ。



気合の入った衣装を見れば、医者狙いで病院に勤めることにした腰掛だと主張してるも同然だ。


「藤崎さん、ご機嫌斜めだね。どうかした?」


私の隣の空間を埋めるように割り込んで腰掛けた亮雅が、私の額をぐりっと指で押す。

どうも、知らないうちに、眉間にしわがよっていたらしい。


機嫌悪いのは、お前だろ、って言葉を飲み込んで、笑った。


「べ、別に、機嫌悪くなんかないですよ」


というのは、実は嘘だ。

私の胸は、すっきりしないもやもやが、この小一時間ほどのあいだにたっぷり溜まっている。

遠く離れた席に座る亮雅が、若い看護師さんたちに囲まれてちやほやするのが目に入って、

などとは、口が裂けてもいえない。


そんな風に思う私が間違ってるんだ。


私と亮雅は、そういう関係じゃないんだから。