きゃははは、という笑い声に混ざって、私も無理やり笑顔を作る。


「もう、いやだ、先生ったら!」


「そっか?俺、そんなにおもしろいか?」


生ビールをおいしそうに飲みながら、オヤジギャグ全開の中年の医者がガハハ、と豪快に笑った。


黒い色彩で統一された店内は、飲み屋以上、バー以下、といったところか。

病院から程近いこのレストランは、時々皆で利用する場所だ。

皆っていうのは、飲みに行くぞ!と発言した医者によって巻き込まれた哀れな子羊たちのことである。


といっても、ただで飲み食いできるとあって、誘われたがる人たちは五万といるわけだが。

実のところ私は、ちょっと苦手だったりする。

だいたいが、大勢引き連れて飲みたがる医者ってのは、下ネタ大好きの、セクハラおやじだったりするから。


「藤崎さん、全然飲んでないじゃないか。今日はおごりなんだから、遠慮するなよ」


「はい。ちゃんと飲んでますよ」


必要以上に顔を近づける医者をさえぎろうと、ウーロン茶が注がれたグラスを差し出した。

とたんに、そいつが私の手を握り締め、そのままグラスの端に自分の口をつけた。