小規模に噴火しておけば、大爆発を免れるだろうから、大森は研修医の鈴木のようになりはしないとは思うが。


それでも彼らの危うい状況を一言で表すとするなら。


“慣れ”


そんなところだろうか。

入ってきたばかりの時期は、緊張して一つ一つの事を丁寧にこなしていた新人が、

少しずつ慣れて、自信をつけ始める頃。


こういう時期が、意外に怖い。

研修医も、半年もすれば自分の判断で薬を投与し始めたりする。

しかも、最初の頃は何でも質問できる雰囲気だったのが、

ちょっとしたプライドが芽生え始めて、素直にわかりません、と言えなくなる時期でもあるのだ。


教える側も教える側で、もう半年たったんだから大丈夫でしょ、

みたいな、何の根拠もない安堵感があったりして。



・・何もなければいいけど。



姉のような犠牲者が、生まれないことだけをそっと祈った。

彼女を執刀したのは、2年目の研修医だ。


完全に、医療事故だと決め付けている、私の勝手な思いだけど--。