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おはようございます、と挨拶をしながら、
私は、身分証を機械にかざす。
ピッ、という軽薄な音がして、
ガチャン、と回転式の鍵が重い音をたてる。
今日はいつもより遅いね、
と、警備のおじさんが笑ってくれた。
私も、同じように笑い返す。
毎日会っているけど、おじさんの名前は知らない。
だって、警備のおじさんはたくさんいて、
皆、同じに見えるから。
警備員A、B、C。
特長も何もない。
ただただ、病院の中に不審者が出ないか見張る仕事。
まぁ、不審者ってのは、つまり
“患者”
のことだけどね。
・・私とおんなじ。
そう思った。
私は、ただの事務員Dだ。