「ええと。藤崎さん、だったよね」


海東は、私の名札を見ながら、確認するようにつぶやく。


「あ、はい。そうですけど」


海東は、週に一度しか外来を担当しない。

病棟ならともかく、外来の受付の人間と医師は、ほとんど接点がないので、

私の名前を覚えてくれる先生なんて珍しい。

彼らは、私たちの存在を、時々思い出したように仕事を頼める便利屋としか思っていない。


けど、そのことに不満を持つのは間違っている。

私が、警備員さんの顔を覚えていても、名前を知らないのと同じことだからだ。


私が海東の目を見つめると、なぜだか視線をそらされた。


「その、亮雅、いや、仲地先生とはどういう・・」


「まぁ~。センセッ。おはようございます!

先生は、いつも時間前に来てくださるから、ほんっと助かりますわ~」


海東の言葉が終わらないうちに、おばちゃんパワー炸裂の挨拶が飛んできた。

すなわち、看護師長、だ。