男は、そのまま階段を駆け上がり、私を地上へと連れ出した。
人工の光とは違う、明るい太陽の光。
思わず、目を眇めた。
私は、人工のライトの方が好きだ。
誰にでも、平等に振りそそぐ。
太陽は・・・。
弱いものには、そっぽを向くから。
特に、この、ビルが乱立した都会のジャングルでは、
ほんの一部の人にしか、その恩恵には預かれない。
男は、駅前でタクシーを拾うと、その中に、私を押し込め、
自分も乗りこんだ。
どちらまで?、というタクシーの運転手の声に、私をじっと見つめる。
仕方なく、私は口を開いた。
「牟礼中央記念病院(むれちゅうおうきねんびょういん)まで」