同じ研修医で、同じ母子家庭。

けど、鈴木にとっては、亮雅が一緒だったことは逆に不幸だったのかもしれない。

すでにアメリカで医師としての研修をつんでいる亮雅は、素人じゃない。

同じ研修医一年目として比べられるのは酷な話だ。


実際、私の手術を亮雅が担当したのも、亮雅の指導医が、腕前を見たいからやらせたらしい、

って、知り合いの看護師から後で聞かされた。

アッペの手術は、研修医にやらせることが多いらしいけど、

いくらなんでも、止血の仕方すら知らない新卒の研修医にいきなりメスは握らせないだろう。


「他に、鈴木みたいになった医師っているか?」


答えにくい質問だったけど、それだって、病院に行けば誰でも知っていることだ。


「看護師さんも入れて、年に数名。あそこまで暴れるとかはないですけど。

精神科にかかってる先生は多いし、ほとんどの先生が眠剤を処方されてます」


それは、紛れもない真実で。

精神科にかかってる職業で多いのは、医療関係者や、学校関係者なんかじゃないかって、

私が、普段から感覚的に感じていることだ。


そうか、と低くつぶやいた後、亮雅は、ソファにもたれかかった。