“母子家庭”

その言葉にちょっとだけ、身が強張った。

それを見抜いたのかどうか、亮雅は自然に切り出した。


「鈴木は、病院から修学資金の援助を受けてるんだ。

だから、うちの病院であと5年働かないと、借りた金を一括返済しないといけない。

辛くても、辞められないって思ってるから、余計に追い詰められたんだろう」


そんなこと、初めて聞く。

だいたい、医者になろうなんて家は、それが当たり前の家庭に育った人が多く、

たいてい生活水準が高い人たちだ。


そこまで言ってから、亮雅は一区切り置いて私を見つめた。


「そういや、お前も母子家庭だったな」


アメリカに行くくらいだから、亮雅はその中でも相当裕福な生活をしているんだと思ってたけど。


「お父さんは、どうしてるんですか?」


「生きてるよ。

離婚した後も、金だけはきっちり送ってくるから、そういう面での苦労はなかったけどな」


私の心を読んでるような亮雅の返事が、少しだけ怖い。

なんとなく、ひっかかるものを感じた気もしたが、それが何かわからなかった。