電車を降りたとたん、またもや私のお腹に痛みがはしった。

胃を押さえて、我慢する。


毎年のこととはいえ、今年のは、やけにしつこい。

もっと強力な胃薬にしなきゃだめかな。


私の様子がおかしいのに、気付いたんだろう。

痴漢を捕まえてくれた男性が、大丈夫ですか?

と、前かがみの私の顔を、下から覗きこんできた。


「どうかしましたか?」


「大丈夫です。ちょっと胃の具合が良くなくて」


「そこのベンチに座りましょう。駅員さんも呼んで来ます」


「いえ、私は・・」


と、突然すさまじい痛みの波が押し寄せてきて、耐え切れずに、私は片膝をついた。


男性が拘束していたオヤジを離し、両腕で私を抱きかかえるような格好になる。

その隙を見逃さず、オヤジは、全力で逃げ出した。

雑踏の中に消えていく。