・・助けてくれた、んだよね?



オヤジは、

知らない、濡れ衣だ、こんなブスを触るわけないだろう、

と繰り返してたけど。


私に向かって、ブスって言うところで、明らかに自分が犯人だと告白しているようなもん。

犯人以外の人間は、私が被害者だって知らないんだからさ。


電車が駅に着くと、その若い男性が引きずるようにして、オヤジを電車から降ろした。



・・どうする?

私が、被害者なんだよね?

降りて、ちゃんと、警察に言わなきゃだめだよね?



なんだか急に、怖くなった。

悪いことしたのは、私じゃないのに、なんか警察に連れてかれると思うと、いまいち楽しくない。

このまま知らんふりしてちゃ、だめかな?


そう思ったとき、綺麗な瞳と、視線がぶつかった。

黒曜石みたいな、光を放つ、二つの瞳。


私は、それに吸い込まれるように、ふらふらと電車を降りた。