体を許したのは、目的があるからだ。

仲地に心を奪われたからではない。


なんとなく、自分に言い聞かせているような気もしたが、

そこをはっきりさせなければ、私はただの体だけの女に成り下がる。


「先生。カルテの話を聞いてくださるんでは?」


あぁ、そうだったっけ?ととぼけた口調で、仲地は手近なスツールに腰をおろした。


カルテ庫の中は延々と棚とカルテ、それにフィルムが並ぶ殺風景なもので、

スツールも一つしか置かれていなかった。

グレーの色がはげかけた、いかにも古そうなものが一つだけ。


私は、立ったまま、仲地を睨んだ。


高い位置から見下ろしているというのに、なぜだか仲地に見下ろされている気がするのが不思議だ。


「で?誰のカルテを探してるんだ?」


聞く気がないのかと思ったが、あっさりと核心に触れてきた。